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ナノテク便利帳

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2008.7.4

◆ No.203 カーボンナノチューブとアスベスト

アスベストの示す健康リスクがカーボンナノチューブに飛び火するのではないかと、かねて専門家の間では懸念されていました。最近、その恐れが現実のものかもしれないことを示唆する2つの論文が立て続けに公表されました。一つは日本の国立医薬品食品衛生研究所の研究者によって日本トキシコロジー学会の欧文誌に発表されたもので、多層カーボンナノチューブをマウスに投与すると高い確率で中皮腫が発生したというものです。
実験動物として、がん抑制遺伝子である「p53遺伝子」ヘテロ欠失マウスに大量の多層カーボンナノチューブを投与した実験なので、このことに対してアメリカの専門機関の所長は批判的な見解を述べています。しかし、この批判は必ずしも適切ではありません。いわば加速試験のようなものですが、その試験で『クロ』の可能性を示したことは大きな意義があると考えます(注の解説参照)。

もう一つはネイチャー・ナノテクノロジー誌に発表された「マウスの腹腔に投与したカーボンナノチューブはアスベストのような毒性を示す」という題の論文です。エジンバラ大学の研究者は、直径がナノメートルのオーダーで、長さが20マイクロメートルといったカーボンナノチューブはアスベストと同じように非常に細長く、形状的に異物として認識されにくいので肺に入り込み、アスベストと同じくらい深刻な脅威になりうると警告しています。こちらの論文では中皮種につながりうる病理変化を観察したことを示したもので、実際に腫瘍が発生したとの成績は示されていません。
異物として認識されやすい短いナノチューブには毒性はないという報告もあり、長短ごちゃ混ぜにナノチューブの毒性を論じるべきではないと考えられ始めています。

カーボンナノチューブは現在、テニスラケットや競技用自転車などのスポーツ用品で実用化されており、将来は医療、環境浄化、次世代コンピューターチップなどに利用されると期待されています。アスベストと同様、最終製品に組み込まれた状態では毒性の懸念はなく、生産工程でもナノチューブは凝集しあうので空気中に飛散されることはなく、呼吸で吸い込まれることは少ないと思われています。しかし、すばらしい素材として幅広く社会に行き渡っていたアスベストが、ヒトが病気になって初めてその危険が認められたという高価な学習結果から、カーボンナノチューブへの期待が高いだけに、慎重で謙虚な姿勢が必要だと思われます。(I)

http://www.technologyreview.com/Nanotech/20815/
注:「日経ものづくり」編集部の荻原博之氏はTechOn(下記URL)に、この問題についての見解を国立医薬品食品衛生研究所へのインタビューを含めて簡潔に解説している。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/TOPCOL/20080627/154029/

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