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| 2008.6.19 |


2008年6月号のネイチャー・ナノテクノロジー誌に約30センチ角の黒っぽい吸油マットの写真が内部の微細構造の写真とともに掲載されています。厚み約50マイクロメートルのそのマットの素材は、簡単な無機材料を湿熱条件下で処理して作ったマンガン酸化物の人工鉱物(人工クリプトメレーン)です。内部構造を見ると、直径約20ナノメートルのクリプトメレーン・ナノワイヤーが均一な太さの房を形成し、それが紙漉きの要領で漉かれたことにより、平均10ナノメートル径の孔がいっぱい開いた構造になっています。無機物とは思えない見事な繊維構造は自己組織化によって作り上げられたものです。 このナノ細孔の毛管現象によって効率的な液の吸収が起こるのですが、実はこのマットはシロキサンという珪素と酸素が交互につながったポリマーの蒸気にさらして、表面が水をはじくよう加工されています。その結果、水はまったく寄せ付けず油だけを吸収するのです。この油に対する際立った選択性こそが今回の技術の最大の特徴です。
驚くべきことにこの吸油マットは、水と分離した状態の油だけでなく、界面活性剤で均一なエマルションになった状態からでも油だけを吸い取ります。さらに、信じがたいことに、ベンゼンとトルエン(ベンゼンの亀の子にメチル基という毛が1本生えただけ)の混合物に浸けるとトルエンだけを吸収するというのです。タンカー事故による海水の重油汚染、水浄化などさまざまな環境対応の用途が考えられます。 とくに強調されているのは、素材が無機物質なので油を一度吸い取ったマットを摂氏600度に加熱すると油は焼けてしまい、新品同様に再生可能だということです。
今回の技術はマサチューセッツ工科大学のステラッチ准教授のグループの成果ですが、掲載誌の編集者はこの研究について「人類が現在立ち向かうべき最大の課題である環境の問題に向けたナノ材料の開発に一石を投じる論理的なアプローチ」と高く評価しています。
舞妓さんがお化粧直しに使い始めたとされる「脂取り紙」は、もともとは金箔を叩いて薄く伸ばす行程で使われる特殊な和紙の、薄くて丈夫で吸脂性に優れる特性が利用されたものとのことですが、京都にいるとこのような用途も頭に浮かびます。(I)
http://www.technologyreview.com/Nanotech/20846/ Nature Nanotechnology, Vol. 3, pp. 321 & 332, June 2008. |

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