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ナノテク便利帳

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2008.4.23

◆ No.198 故フォークマン博士の発見がナノテクで日の目を見るか

正常な細胞がガン細胞に変化してから何年もかけてある大きさにまで成長し、病気としてのガンになります。ガン細胞が大きくなるためには自分を養う血管を新しく作る「血管新生」の過程が必要だという説を唱えた学者がいました。ハーバード大学教授のジュダ・フォークマン博士です。同博士がその説を最初に投稿したのは1963年でしたが、なかなか受け入れられず、論文として印刷されたのは1971年だったそうです。今や「ガン血管新生説」はほぼ定説になっていますが、それが世の中に受け入れられるまでにはさらに長い年月がかかりました。その過程でフォークマン博士は血管新生を抑制する化合物を発見しました。こうじ菌の仲間のカビが作るフマギリンという物質です。
フマギリンで血管新生を抑制すれば、ちょうど兵糧攻めのようにガンの成長を抑えることができるだろうと考えて医薬としての開発が日本の製薬企業も参加して試みられました。しかし、残念ながら腎臓に対する毒性が強くてモノにはなりませんでした。
このフマギリンがナノテクで見直されようとしています。

セントルイスのワシントン大学の研究者達は、大きさが約200ナノメートルのパーフルオロカーボンの表面を2種類の油性の物質(新生血管に特徴的な成分を認識するタンパク質とMRI造影を可能にする金属物質)で覆った粒子を新しくできた血管を造影するために作っていました。今回はその粒子の油性の表面にフマギリンを添加したのです。
この三位一体機能を表面にもつナノ粒子を注射するとその粒子はガンに栄養を送り届けている新生血管だけに集まり、フマギリンを増殖中の内皮細胞に固着させます。ナノ粒子の油性の外皮は細胞のリピッド膜と融合し、フマギリンと造影物質が細胞に送り込まれます。血管新生を行っていない正常細胞には薬剤も造影物質も送り込まれません。
この方法によってフマギリンが通常の1000分の1の用量で血管内皮細胞の増殖を抑制し、その用量ではまったく毒性が現れないことがウサギで確認されました。
さらに投薬されたウサギでは免疫細胞がガンに浸透しやすくなって、異物として排除されやすくなることも認められました。

フォークマン博士は残念ながら今年1月の学会出張中に空港で心臓発作を起こし74歳でなくなりました。昔、ハーバード大学を案内してもらったときの同博士の温顔を思い出し、ご冥福を祈りながら、フマギリンをガン治療薬として甦えらせるナノメディシンの発展に期待を寄せています。(I)

http://www.technologyreview.com/Nanotech/20552/
http://www.sciencedaily.com/releases/2008/04/080402181236.htm

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