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| 2008.2.21 |

| ◆ No.193 小型高感度磁力計・・・どんな効能が? |

磁力計は小型で感度が鈍いものと、感度は高いが馬鹿でかいものしかなかったそうです。MIT Technology Review誌が選んだ2008年度の10個の注目技術(TR10)の一つとして、アメリカの国立標準技術研究所(NIST)が開発中の小型で高感度な原子磁力計(Atomic Magnetometer)が紹介されています。磁力計の高性能化にどのような効能があるかは後述するとして、まず技術の特徴を説明します。
原子磁力計は気体状のセシウム原子の整列度(アラインメント)が磁場によって変化し、磁場がない状態では素通りするレーザー光が、磁場の強さに比例して吸収される現象を利用しています。今回の装置の心臓部は赤外線レーザと光センサーの間に、セシウム蒸気を充填した数立方ミリメートルのセル(vapor cell)をサンドイッチ状にはさんだ構造になっています。また、そのvapor cellの上下に導電性のフィルムを置き、その間に電流を流して加熱し、セシウムの気体状態を保つようにしています。 部材はガラス、シリコン、安い市販の赤外線レーザー、光センサーなどで材料費は格安です。また、加工に使うリソグラフィー、化学的エッチングなどのマイクロマシン技術も特殊なものではなく、量産化技術も検討されています(注)。
原子磁力計は50年も前から存在し、最高、地磁気の約500億分の一(1フェムトテスラ)の磁場を観測する装置も開発されていましたが、ガラスを吹いて作ったvapor cellは缶ビールくらいの大きさでした。NISTの技術はその部分の極微小化に成功したのです。
小さくて製造原価が安く、消費電力も少ないということはバッテリー駆動のポータブルで、かつセンサー部分をいくつも組み込んだ装置ができることになります。複数個のセンサーを使うメリットは被検物の形や存在する位置を識別できる磁力計ができるということです。例えば、古釘など、さまざまな金属が埋まっている地中の地雷を、形情報を認識して探知することも可能でしょう。 また、アルツハイマー病の診断などに有効なMRI装置は大型ですが、磁場センシングの小型高感度でポータブルのMRIも可能になると思われます。高感度化で弱い磁場のMRI装置が可能になり、ペースメーカー装着患者も検査を受けられることになります ポータブルの化学分析用NMRができればそれを野外に持ち出して、地下資源を探査したり、水の中の汚染物質を識別することも可能です。ギョウザの中の農薬の検出など朝飯前です。
このような幅広い用途が期待できるのも、地雷のような金属だけでなく、人体も、タンパク分子もすべてが独自の磁界をもっていることによります。ナノテクの世界でもよく使われる磁気ビーズと組み合わせると面白い診断技術ができるのではないでしょうか。(I)
http://www.technologyreview.com/read_article.aspx?ch=specialsections&sc=emerging08&id=20239&a=
注:vapor cellはガラスとシリコンを高温・高電圧下に圧着して作っていますが、素人目には密閉度が安定して確保できるか眉唾に思われます。小さなガラス・キューブをフェムト秒レーザでくり抜くのが名案だと思いますがいかがなものでしょう。真空下でセシウムガスを注入してガラス板で密閉するステップも難しそうです。 |

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