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ナノテク便利帳

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2008.1.31

◆ No.191 DNA「においセンサー」が示唆する大きな可能性

最近PLoS Biology(注)というオープンアクセス学術誌に、DNAの短い一本鎖断片が乾燥状態で「においセンサー」として利用できそうだという衝撃的な話が紹介されました。
塩基数が20くらいでできた直鎖状の一本鎖DNAの末端に蛍光色素を化学結合したものを顕微鏡用のカバーグラスの上にアレイ状にスポットし、それをガスにさらした後、蛍光色素で染色すると、塩基の並び方(配列)によって特定のガスに反応して蛍光発色することがわかりました。ある配列のDNA断片では、6 ppb (0.006 ppm)の2,4-ジニトロトルエン(DNT)が検出できたそうです。DNTはTNT火薬から出てくる成分で、この程度の感度があれば地雷検出に応用できる可能性もあるとのことです。

この現象を発見したのはボストン郊外のコグニセント(Cogniscent)社というベンチャーです。約10年間、合成高分子で「においセンサー」を目指していたのですが満足する成果が得られず、数年前にダメモトでDNAをテストし、今回の成果に結びつけたのです。

今回の成績は「におい成分」の検出ですが、ほかの化学物質の検出にも乾燥DNA断片が利用できる可能性があります。特に、4種類の塩基(A、G、C、T)の並び方でバラエティーに富んだDNA断片ができるのが利点です。例えば塩基2つだと4の二乗(16種)、3つだと4の三乗(64種)、21個だと4の二十一乗(1兆種以上)といった多様なDNA断片ができます。
ごく最近、アメリカのベンター研究所で、ある種の細菌のゲノムが合成されたことが報道されていましたが、DNA断片の合成は朝飯前の化学になっています。一方アレイ技術、検出技術にも長足の進歩が見られます。このようなことを背景に「乾燥1本DNA断片によるセンシング」が今後大流行する予兆を感じます。(I)

参考資料:
http://biology.plosjournals.org/perlserv/?request=get-document&doi=10.1371/journal.pbio.0060009
http://www.technologyreview.com/Biotech/20095/

注:PLoS Biologyは科学技術学術雑誌の公共アーカイブを主張する任意団体Public Library of Scienceの出版物の一つです。厳密な査読審査や編集基準を持つ立派な学術誌で、しかもありがたいことにネットで読むことが出来ます。注目すべき論文には、その価値が専門家以外にも理解できるように配慮したsynopsis(梗概)がつけられています。今日紹介した論文には「新規DNA-色素複合体がにおいを嗅ぎ分ける」という題の梗概がつけられています。なおPLoSは、読者が無料で利用できる一方で、著者に対しては1論文約1,500ドルの掲載料が求められています。

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